遙か恋歌


 こちらは、「遙かなる時空の中で3」というゲームや、登場人物のイメージに合わせて、管理人が自分で和歌を選んでみたページです。

 

「和歌」はいわゆる「乙女ゲーム」と相性がいい。

と、管理人は思っています。

「遙か」に限らず、乙女ゲームにハマっている時、和歌を見ると萌えます(笑)。

「この歌は、まるで○○と△△のことを詠んでいるみたい……」と思える和歌に出会えます。

 

 古典が苦手でも大丈夫です。管理人も、和歌に詳しいわけではありません。

 今はネットでも簡単に歌の意味が調べられますし、「超訳」とかなじみやすい読み物も増えています。

皆さんも、萌えが足りない時は、是非、和歌に親しんでください(笑)。

 

和歌には、「秘めた恋」「逢えない恋」「片思い」「引き裂かれた2人」などなど、切ないシチュエーションが満載。

乙女ゲームが好きな人なら、きっとハマると思いますよ。

 

 尚、現代語訳については、ゲームのイメージにあわせて、かなり意訳しております。あくまで参考までにご覧ください。

 

ゲーム中に出てくる和歌の解説はこちら

 

遙か恋歌・管理人選

十六夜記有川将臣源九郎義経ヒノエ武蔵坊弁慶有川譲梶原景時平敦盛リズヴァーン平知盛平重衡朔と黒龍平清盛

 


十六夜記

たまさかに 秋の一夜(ひとよ)を待ち得ても 明くる程なき 星合(ほしあい)の空  藤原隆房

 (七夕の夜が間もなく明けてしまう。織姫と彦星は、ずっとこの日を待ち焦がれていたのに。なんて短くて、切ない逢瀬だろう)

 

 当サイト「星合の船」は七夕を意味する「星合の空」から名付けました。

 旧暦の七月七日は、必ず上弦の月になるんだそうです。

 上弦の月を船に見立てて、彦星がその船に乗って、織姫に会いに行く。

源氏と平家に引き裂かれてしまった望美と将臣の関係は、どこか七夕のイメージと重なるものがありますよね。

 

(つか)()の 闇のうつつも まだ知らぬ 夢より夢に 惑いぬるかな  式子内親王

 (現実の恋もまだ知らないうちに、闇から闇へ、夢から夢へ。そんな繰り返しに迷い込んでしまった)

 

 下の歌は、大切な人を救うため、時空を超え続ける望美をイメージして。

 


有川将臣

 将臣といえば、やっぱり「夢逢瀬」。なので、「夢」に関する2首です。

 

限りなき 思いのままに 夜も来む 夢路をさえに 人は咎めじ  小野小町

 (この思いに身を任せて、今夜、おまえに会いに行く。夢の中までは、誰も咎めやしないだろう?)

 

これや夢 いづれか(うつつ) (はかな)さを 思いわかでも 過ぎぬべきかな  上西門院兵衛

 (どっちが夢で現実か?よくわからないうちに、ここまで来ちまったな)

 

 下の歌は、異世界に飛ばされた将臣の主観で。

 現代の高校生でありながら、「還内府」として戦場に立つ彼は、半分、夢を見ているような心地がするかもしれません。

それとも、かつて暮らした現代の方が、遠い夢だったような気がするでしょうか。

 


源九郎義経

目には見て 手には取らえぬ 月の内の (かつら)の如き (いも)をいかにせむ  湯原王

 (見つめるだけで、この手はのばせない。どうすればいいのかわからないほど、おまえが愛しい)

 

(いも)」は妹ではなく、親しい女性を指す言葉。

「桂」は月にあるという伝説の木。「手の届かないもの」の象徴でしょうか。

 望美のことをひたむきに想いながら、それを伝えられない九郎のイメージで。

 


ヒノエ

 軟派なヒノエなので、タイプの似た男性の詠んだ歌を選びました。

在原業平は恋多き男として有名な歌人。源融は光源氏のモデルとも言われている人です。

 

君により 思いならいぬ 世の中の 人はこれをや 恋といふらむ  在原業平

 (君に会って初めて、恋って感情を知ったよ)

 

照る月を まさ木の綱に よりかけて あかず別るる 人をつながむ (みなもと)(のとおる)

 (君は俺だけの輝く月。別れ別れになるなんて真っ平だから、この綱でつなぎとめておこうか)

 


武蔵坊弁慶

 他人にはけして明かすことのできない罪を背負う弁慶。笑顔とは裏腹に、暗いイメージが強いキャラです。

 

浅からぬ この世ひとつの 嘆きかは 夢よりのちの 罪の深さよ  藤原隆房

 (この身の罪と嘆きは、死してのちにも続くだろう)

 

月のゆく 山に心を送り入れて 闇なるあとの 身をいかにせむ  西行法師

 (月は沈み、闇の中に1人残されて。さて、これからどうすればよいのか――)

 

 「月」は望美の象徴。もしも彼女が去ってしまったら……。

 


有川譲

 譲といえば片思い。……というのはひどい?(笑)

管理人が最初にエンディングを迎えたのは彼ですし、幸せになってほしいキャラなんですけどね。

 ただ、和歌には「届かない想い」を詠んだものが非常に多く、どれもこれもが譲に似合うのが困りもの(笑)。

 厳選して、2首。

 

憂き人の 月は何ぞの ゆかりぞと 思いながらも うち眺めつつ  徳大寺実定

 (自分のことを振り向いてくれないあの人と、月は何の関係があるっていうんだ。そう思いながらも、見上げずにはいられなくて……)

 

(つら)しとも また恋しとも さまざまに 思うことこそ 暇なかりけれ  敦道親王

 (あなたのことを思うと、苦しさと愛しさが入り乱れて、少しも心休まる暇がない。いったいどれだけ自分を振り回す気ですか?)

 

 和泉式部のもとに男性が通っているという噂を聞いて、心穏やかでない恋人が詠んだ、嫉妬の歌です。

 


梶原景時

 梅の花が好き、という景時に捧げる二首。

 

雪の上に 照れる月夜(つくよ)に 梅の花 折りて贈らむ ()しき()もがも  大伴家持

(月の光が雪の上を照らしている。こんな美しい夜に、梅の花を折って君に届けたい。……なんて、そんな大切な人が、自分に居たらいいのになあ)

 

 望美への好意を示しつつ、最後にちょっとだけおどけてしまう景時をご想像ください。

 

霞立つ 春日の里の 梅の花 山の嵐に 散りこすなゆめ 大友宿袮村上

 (春日の里に咲く美しい花よ。激しい嵐が吹いても、どうか散らないでおくれ)

 

 春日はいわずもがな、望美の姓ですが、奈良県春日神社一体の地名でもあり、和歌にもよく詠まれています。

 運命に翻弄される望美を想いつつ、自分の立場に縛られて、彼女を救えない……そんな景時の切ない心情を想像してみました。

 


平敦盛

身のほどに 思いあまれる けしきにて いづちともなく ゆく蛍かな  平忠度

 (その身に隠しきれない熱い思いを抱いて、どこへともなく行く蛍よ)

 

 敦盛の叔父、平忠度の詠んだ歌。

 蛍の(はかな)さと、内に秘めた熱い情熱が、なんとなく敦盛に似合うかなあ、と選びました。

 

ゆく蛍 雲の上まで ()ぬべくは  秋風吹くと 雁に告げこせ  在原業平

(蛍よ、雲の上まで行くのなら、もう秋風が吹くよと雁に伝えておくれ)

 

 敦盛と蛍・その2。

 雁は秋風が吹く頃、飛来する鳥。

『伊勢物語』という古典の中で、死んでしまった女性の魂が戻ってくることを願って詠まれた歌です。

 


リズヴァーン

恋死なば 鳥ともなりて 君が住む 宿の梢に ねぐら定めむ  崇徳院

 (この想いの果てに命を落としたならば、鳥となっておまえのもとに行こう。そして、おまえの住む家の、庭木の梢に住むことにしよう)

 

 リズ先生といえば、和歌より漢詩ですよね。

 この和歌も漢詩から生まれたものです。

 楊貴妃と玄宗皇帝の悲恋を描いた「長恨歌」の一説、「天に在りては願わくは比翼の鳥となり、地に在りては願わくは連理の枝と為らん」がもとになっています。

 「比翼の鳥」は羽がくっついた二羽の鳥で、「連理の枝」も同様に枝がつながった木。要するに、ずっとずっと一緒に居ましょう、次の世でも夫婦になりましょう、という意味。

 時空を超えて、神子への愛を一途に貫くリズ先生に。

 


平知盛

(あま)(くも)に 近く光りて 鳴る神の 見れば(かしこ)し 見ねば悲しも  詠み人知らず

  (嵐の夜に一瞬光る、あの稲妻のように近付きがたい人。なのに、会えないと無性に恋しくなって……)

 

鳴る神は、知盛から見た望美のイメージで。

鮮烈で美しく、刹那の邂逅が、忘れ難い記憶を心に焼き付ける。

 歌の後半、「見れば恐し…」の辺りは、知盛に惹かれる望美の心情かなあ、と思います。

 

 この歌は万葉集に出ている歌ですが、当時「悲し」は「愛し」と書くこともありました。

 悲しいほど切なく、(いと)しい気持ちを表す言葉なのでしょう。

 日本語って美しいですね……。

 

人心(ひとごころ) 手飼いの虎に あらねども 慣れしもなどか うとくなるらむ 土御門院

 (慣れたと思えば、また離れていく。人の心は、さしずめ猫のよう)

 

「手飼いの虎」って、猫のことなんだそうです。

 飼い慣らされた虎、イコール猫、ってことなんでしょうか。

 なんとなく、知盛に似合う言葉だと思いませんか?

 


平重衡

「十六夜の逢瀬」のイベント後、どこに居るかもわからない「十六夜の君」をひたむきに想い続ける重衡に贈る二首。

 

見るや君 さ夜うち更けて 山の端に くまなく澄める 秋の夜の月  敦道親王

 (ご覧になっておられますか、十六夜の君。あの山の端に光る美しく澄んだ月を……)

 

ぬばたまの その夜の月夜(つくよ) 今日までに 我は忘れず 間なくし()えば      河内百枝娘子

 (あの月夜の逢瀬を、今日まで片時も忘れたことはありません)

 


朔と黒龍

 自ルート以外では結ばれない運命の朔と黒龍。

神様と人間の、けして報われない恋。できれば幸せになってほしい2人ですが……。

 

 朔が黒龍を想う歌として。

 

あはれいかで (いず)れの世にか 巡り逢いて ありし有明の月を見るべき  菅原孝標女(たかすえのむすめ)

 (ああ、どうしたら、いつか生まれ変わってあなたに会えるだろう……)

 

 黒龍から朔への、愛の歌として。

 

雲となり 雨となりても 身に添わば 虚しき空を 形見とや見む  小侍従

 (私は雲になり、雨となって、あなたに寄り添おう。だからどうか、空を見る時は私を思い出しておくれ)

 


平清盛

風の音に 秋の夜ぶかく 寝覚(ねざめ)して 見果てぬ夢の 名残をぞ思う  平忠度

 (秋の夜遅く、風の音に目が覚めて、途切れた夢の続きに思いを馳せる)

 

 夜中にふと目を覚まし、自分が夢を見ていたことに気づく。

 そんな儚い夢と、人生の儚さとを重ねて詠まれた歌は数多くあります。

 死してのちも、自身の野望を追い続けた清盛。

 彼が「夢」見たものは何だったのでしょうか……。




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