遙か恋歌


 こちらは、「遙かなる時空の中で3」と「和歌」に関するページです。

 平安時代、男女の恋に歌は欠かせないものでした。

 平安の都・京を舞台にした恋愛アドベンチャーである「遙か1〜3」でも、当然のように和歌が登場し、ゲームに彩りを添えています。

 

 このページでは、ゲーム中に登場した和歌の意味を、キャラクターごとに解説しています。

 現代語訳については、ゲームのイメージにあわせて意訳していますので、あくまで参考までに。

 間違っても、古典のテストやレポートにそのまま書いてはいけません(笑)。

 

 また、「こちらのページ」では、管理人が「遙か3」のイメージに合わせてキャラごとに選んだ和歌と解説を載せています。お暇のある方はご覧ください。

 

遙か恋歌・ゲーム本編

大団円有川将臣源九郎義経ヒノエ武蔵坊弁慶有川譲梶原景時平敦盛リズヴァーン白龍梶原朔平知盛平経正

 


大団円エンド

天の原 踏み(とどろ)かし 鳴る神も 思ふ仲をば 裂くるものかは  詠み人知らず

 (この思いを止めることはできない。たとえ神でも、運命でも)

 

 大団円エンドの歌です。

鳴る神は雷のこと。落雷が生木を引き裂くように、想い合う2人の仲を裂くことはできない、という意味。

 空いっぱいに響き渡る雷の音が、戦とか権力争いとか、恋人たちの前に立ちはだかる過酷な運命を象徴しているんでしょうね。

 

 「あの人を守るためなら、運命だって変えてみせる」

 望美の強い決意と意志が感じられる歌です。

 恋する乙女は神をも恐れません。……でも、好きな人のためだからって、他人の運命まで変えていいのか(笑)。

 プレイ中、何度かそう思う場面があったんですけど……。そこは乙女ゲームだし、深く突っ込むのが野暮ということなんでしょうか……。

 


有川将臣

思いつつ ()ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを  小野小町

(会いたいと思い続けていたあいつに、ようやく会えた――でも、それは夢の中だったんだ。そうとわかっていたなら、覚めようとは思わなかったのにな)

 

実際の将臣は、こんな後ろ向き思考はしない気もしますが、管理人的には好きな歌です。

 「夢」で想い人に会う、というのは和歌の主題としては定番だったらしく、「夢逢瀬」をテーマにした和歌は、他にもたくさんあります。

 小倉百人一首に詠まれている「すみのえの〜」なんかもそうです。

 


源九郎義経

いにしえの しずのおだまき 繰り返し 昔を今に なすよしもがな  『伊勢物語』より

 (繰り返し繰り返し糸を巻いて糸玉を作るように、時を戻す方法があればいいのに)

 

 「昔に戻りたい」、つまり寄りを戻したい、の意。

 『伊勢物語』というお話の中で、ある男が、昔付き合っていた女性にこの歌を送りました。

女性の返事はなかったので、要はふられたということなんですが……それでいいのか、九郎(笑)。

 


ヒノエ

わが恋は よむともつきじ 荒磯(ありそ)(うみ)の 浜の真砂(まさご)は よみ尽くすとも  古今和歌集 仮名序より

 (もしも、この浜辺の砂を全て数え尽くすことができたとしても、俺の想いを言い尽くすことはできないよ)

 

 浜辺の砂のような、数えようにも数え切れないものと、言い尽くせない想いの深さを重ねた歌です。

 詠み手がヒノエだからといって、けっして「気が多い」という意味ではありません(笑)。

 


武蔵坊弁慶

暗きより 暗き道にぞ 入りぬべき はるかに照らせ 山の()の月  和泉式部

 (闇から闇へと惑う僕の心を、どうか、あなたの光で導いてください)

 

 和泉式部が、性空上人というお坊さんに送った歌です。

暗き道、は煩悩の深い迷い。月は御仏の救い。

恋愛の歌ではないんですが、弁慶ルートの歌としては合っている気がします。

重たい罪を抱えた弁慶の心を、月のように明るく照らす存在=「神子」。

2人の関係をよく表しているのではないでしょうか。

 


有川譲

かぎりとて 別るる道の 悲しきに いかまほしきは 命なりけり  紫式部

 (今はもうお別れです。もっと生きたいと願っているのに……)

 

『源氏物語』の中で、光源氏の母・桐壺更衣が亡くなる前に詠んだ歌です。

 ちょっと解釈に迷う歌なのか、サイトや史料によって訳が随分違っていて困りました。

 「まほし」が「〜したい」。

「いかまほし」は「生きたい」という意味でしょうけど、「生きたいものは命なんです」って、ちょっと言いたいことがよくわからない。

 どうも「生きたい」と「行きたい」を掛けているようで、「行く」は二句の「道」につながり、「私は別れの道を行きたいんじゃありません。命を生きたいんですよ」と言っている……のかな?辞世の句にしては、なんかダジャレみたいですね。

 要するに、愛する夫や息子との別れを悲しむ歌なんですが。

 


梶原景時

我が君の 手向(たむ)けの(こま) 引き連れて 行く末遠き しるしあらはせ  梶原景時

 (わが君の馬を奉納します。どうか源氏が繁栄するよう、末永くお守りください)

 

 実在の梶原景時が、住吉神社に馬を奉納した際、詠んだ歌。

 恋愛、全然関係ないですね。

 


平敦盛

春の夜の 闇はあやなし 梅の花 色こそ見えね 香やは隠るる  (おおし)(こう)(ちの)()(つね)

 (何もかも、まったき闇に覆い尽くしてしまう春の夜。梅の花の美しさは隠せても、その高貴な香りまでは隠せない)

 

闇=怨霊だとすると、梅の香りが敦盛なのかな?

その身は闇に蝕まれても、気高い心までは覆い尽くせない……といったところでしょうか。

 


リズヴァーン

人生代代無窮已  人生 代々(きわ)まり()むこと無く
江月年年祇相似  江月 年々()だ相似たり
不知江月待何人  知らず 江月の何人(なんぴと)を待つかを
但見長江送流水  (ただ) 長江の水の流を見送るのみ

 

(人の世は移り変わっていく。

 しかし川面を照らす月は少しも変わらない。

 この月は誰を待っているのだろう。

 私の目にうつるのは、ただ、留まることなく流れる大河だけ――)

 

 リズ先生だけ、和歌じゃなく漢詩なんですよね。

 張若虚という大陸の詩人が読んだ、「春江花月夜」という詩の一節。

 美しい自然の情景と、今は遠くに居る愛しい人への想いを重ねて詠んだ詩なんだそうです。

「遙か」風に解釈すると、月が望美で大河が運命、ってことになるんでしょうね。

 


白龍

恋ひ恋ひて 逢へる時だに 愛しき 言尽(ことつ)くしてよ 長くと思はば  大伴(おおともの)坂上郎女(さかのうえのいらつめ)

 (ずっとずっとあなたに恋い焦がれていた。ようやく会えた時くらい、もっと好きだと言って)

 

坂上郎女は、日本最古の歌集「万葉集」を代表する歌人の1人。

時代が古い分、のちの和歌に比べて、想いの表し方も情熱的でストレートです。

 ストレート、ってところが白龍なのかな?

 


梶原朔

いにしえは 月にたとえし 君なれど その光なき 深山(みやま)()の里  『平家物語』灌頂の巻より

 (かつては月にも例えられるほど宮中で光り輝いていたあなたが、今はこのように深い山里で侘しくお暮らしとは……)

 

 平家が壇ノ浦で滅亡した後、出家して寂しく暮らす建礼門院(安徳帝の母親)を、後白河院が見舞うという話の中で、院の臣下である徳大寺実定が詠んだ歌。

 史実なのか創作なのか不明なエピソードですが、多分、創作じゃないのかな。

 だいたい、どのツラ下げて会いに行けるんだ、後白河院。建礼門院にしてみれば、院の顔なんて見たくもないと思う……。

 この歌を朔に選んだのは、建礼門院が出家して住んでいたのが、ゲームにも出てきた大原だからでしょう。

 愛する人を失い、出家して寂しく暮らす女性、ってことで朔と女院を重ねたのかもしれませんが……正直、2人の立場はかなり違うような……。

 


一樹(いちじゅ)の陰に宿りあい 同じ流れをむすぶも みな(これ)先世のちぎり  『平家物語』千手前より

 (同じ木陰で身を寄せ合うこと、同じ流れの水を飲むこと。そんな小さな縁さえ、全て前世からの宿縁によるものなのです)

 

 和歌ではなく、今様(当時の流行歌)です。

 一の谷で源氏に捕らえられた重衡は、鎌倉の頼朝のもとに送られます。その際、重衡の世話係だった「千手前」という女性がこの歌を歌いました。

虜囚の身でありながら、重衡はいろんな人に親切にされていますね。運がよかったのかもしれませんけど、彼の人柄の良さもあったんじゃないかな。

そんな魅力的な青年が、わずか29歳で処刑されてしまう……。きっと、やりたいことがたくさんあっただろうなあ……。

 


平知盛

君とわれ いかなることを 契りけむ 昔のよしこそ 知らまほしけれ  詠み人知らず

 (俺とおまえに何があったのか……?前世の契りを知りたいものだな……)

 

 「まほし」は「〜したい」という意味。

 「昔のよし」は前世の縁。

 知盛ルート最終章にぴったりな歌ですね。

 ただ、詠み人知らずなので、この歌がどんな時に、どんな情景のもとで読まれたのかはわかりません。残念。

 


平経正

ちはやふる 神に祈りの 叶えばや (しる)くも色の (あら)われにける 『平家物語』竹生島詣より

 (これは――私の祈りが神に通じたしるしに違いありません)

 

 木曽義仲との戦に赴く途中、経正は琵琶湖の竹生島という場所に立ち寄りました。

 そこに住んでいた僧侶が、経正が琵琶の名手と聞いて、「是非弾いてください」と秘蔵の琵琶を差し出します。

 経正が琵琶を弾くと、その音色の素晴らしさに竹生島の神も心動かされて、白い竜となって経正のそでの上に現れました。

 これはきっと戦にも勝てるに違いない、と喜んだ経正。

 その感動を詠んだ歌です。

 ……でも、戦には負けてしまうんですよね……。




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